きたくち

はい。

年報(2021)

やっはろー。

今年最も強く記憶に残っているのは、1月頭から2月半ばまでを過ごした静岡・三島での生活ですね。

三島

都会との程よい距離感、海・山両方へのアクセスの良さ、そして温泉・クラフトビール天国。これらは以前からとても魅力的に感じていて、2020年には真面目に部屋を探した(決めかねて諦めたが)。そこで今年は年始から、格安ホテルのマンスリープランでお試し三島暮らしを敢行。

結果は期待以上で、富士・伊豆地方の冬の低山を満喫しながら、知る限り全ての静岡市以東の県内ブリュワリー*1を訪れることのできた充実の1ヶ月間だった。

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長者ヶ岳からの眺望は今年一番の感動。

年初に『じぶんローカライズ元年』と宣言したように、できるだけコミュニティ・ローカルに根ざして動くことが今年のテーマだった。その第一歩として、三島近郊ではいくつか「いきつけ」を作ることもできた。

どこも本当に美味しいのでおすすめです。

個人的に去年からスパイスカレーのお店巡りにハマっていて、その点でも三島・沼津周辺は独自の進化を遂げていて楽しかった。

移住

そんなスタートを経て2月にカナダ・バンクーバーへ移住してから早10ヶ月。スパイスカレー文化の喪失、温泉の無い人生、そして全く穏やかじゃない空模様がとても厳しい。

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いやはや、太平洋岸北西部の冬を完全にナメていた。とにかく暗くて雨天曇天*2。ここ数年間、先述のように冬といえば関東近郊の無敵の快晴の下で低山登山を満喫していた単身の人間にはあまりにも過酷な現実である。

振り返ると、4月頭の連休にトレッキングに行ったらあまりの人出にドン引きしたわけだが、そりゃぁこの暗い冬を過ごせば誰だって春が待ち遠しくなるわけだ。僕も来年はもっと春夏を大切にしよう…。 

もちろん知識としては知っていたし、過去のポートランド、シアトル、バンクーバーへの旅行・出張の際にもその気配を感じ取ってはいたが、いざ住むとなるとこれは想像以上に骨身にこたえる。それを経験的に知ることができただけでも移住する価値はあったなぁと思う。というわけで、現時点では出国時の予想から変わらず「日本サイコー」です。

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ホリデーシーズンだ〜と喜び勇んで島山ハイキングにきたらメッチャ雪(最高でした)

そんなわけで特にやることもないので、友人、家族、前職の同僚などと積極的にオンラインで雑談したり飲んだりする日々です。みなさんもどうですか(?)

https://calendly.com/takuti/30min

変化

先進国から先進国(英語圏)への移住で、未だに世界はパンデミック真っ只中。というわけで大まかな暮らしぶりは去年からほぼ変わっていない。それでも年報(2020)と100%同じかというとそうでもなくて、

  • 飲食の傾向
  • 山の登り方
  • ニュースの見方

特にこの3つは、この一年で大きく変わったなぁと感じる。

飲食の傾向

7割くらいベジタリアン、いわゆる“フレキシタリアン” (flexible + vegetarian) になった。今は肉は月に数回しか食べなくて(すべて外食)、家では穀物と野菜:卵:魚=7:2:1といったところ。

主な動機は環境負荷軽減だが、おいしいベジタリアンヴィーガンレストランが多いというのも継続を後押ししている。あと、そもそも外食の回数自体が激減したので、去年以上に食の「幅」が増した。サラダチキンの買えるコンビニや、つまみの充実したちょい呑み居酒屋なんてありゃしないのよ。

「食の多様性」を意識するようになった結果、炭水化物にしても、オートミールだけじゃなくてミューズリー、全粒粉パン、雑穀ベーグルなど色々摂るようにしている。

一方で、タンパク質不足・脂質過多といかに向き合うかが課題になった。

最初の頃は肉の分を埋め合わせるために低脂肪牛乳、ギリシャヨーグルト、カッテージチーズを活用していたのだが、John's Hopkins Universityのオンラインコース "Public Health Perspectives on Sustainable Diets" で「フレキシタリアンは乳製品を過剰摂取する傾向にあり、“3分の2ヴィーガン”(3食のうち1回は肉を食べる、ゆるいヴィーガン)よりも温室効果ガス排出量の点で環境に悪い」と聞いてメッチャ反省した。

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なので今は乳製品も完全にカットしていて、プロテインもホエイからヴィーガンプロテインに切り替えた。

肉と乳製品を削ると残るタンパク源は卵や植物性のもの(豆)が中心になるわけだが、これらは同時に脂質も豊富。したがってP35% / F20% / C45%程度の個人的に理想とするPFCバランスを維持するのが相当難しい。とはいえ、最近読んだ『多様性の科学』でも触れられていたように、脂質・糖質に対する身体の反応は人それぞれであり「平均値(いわゆるベストプラクティス)」に惑わされないことが大切。このことを忘れず、引き続き自分のからだを使ってゲーム感覚で試行錯誤を続けたい。

飲食に関するもう1つの変化は飲酒について。

ここ数年はクラフトビールにハマり続けていて、それでも「ビール:日本酒:ワイン:他=5:3:1:1」くらいだったのだが、今年は確実に「ビール:他=9:1」。それほどバンクーバークラフトビール天国。静岡よりもすごい。そもそも自宅から徒歩30分圏内にマイクロブリュワリー8軒 (!)(+シードル醸造所1軒、オープン間近のブリュワリー1軒)というのがバグっている。

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なので、先週はワイナリー(これも徒歩圏内)の試飲で気に入った赤をボトルで買った。年末はこれでいくぞ。

飲む頻度が増えれば興味の幅も広がるわけで、これまでのピルスナー、ラガー、ペールエール寄りの好みから外れて、サワーやポーター、スタウトなどイロイロと飲むようになった。最近は寒空の下ちびちびと飲むハイアルコールな一杯が至福であります。あと、「ヘイジーペールエール」(ヘイジーIPAではない)という日本ではあまり見ないスタイルも気に入っていて、移住した直後は狂ったように飲んでいた。

お酒は知識で飲むものではないと思うけれど、これだけ飲んでいるとごく自然に「もっと知りたい」欲が出てくるもので。来年はBeer Judge Certificate Programの試験に挑戦してみようかと検討中。

ローカルポッドキャスト番組で聞く醸造家、ブリュワリー経営者のインタビューも刺激になって面白い。

最後にはみんな口を揃えて「この業界はおすすめしない」といっているのが味わい深いが…。収益性は海を超えても共通の課題らしい。

www.hotpepper.jp

山の登り方

一言でいうと「登山」から「トレッキング」になった。

日本での山登りは単独ファストハイク・ピークハントが基本で、山頂に着いてもほんの数分景色を楽しんだ後は駆け下りるように下山、というスタイルだった。

しかし、バンクーバー近郊の山はそもそもピークらしいピークが無い・・・いや、あるんだけど、登ろうと思えばその先もどこまでもエクストリームに行けてしまうので、自然と“節度”をわきまえるようになる。結果、景色をゆっくりと味わいながら歩くことが増えた。

頻度はあまり変わっていなくて、(晴れている春夏シーズンに限り)隔週くらいのペースで山に行く生活は相変わらず。コースが無限にあって悩むので、ガイドブックを買って参考にしている。

踏破率 12/105

あと、カナダに来てから知り合う人がもれなくアウトドア趣味を持っている、というか「趣味はアウトドアです」が「趣味は読書です」並に一般的な世界観なので、誰かと一緒に登る機会も日本よりは増えた。すると山行はより一層カジュアルなものになり、これはこれで悪くないな、と気付かされる。

他方、勾配の緩やかなカジュアルハイクを何回か続けると「これ走れるんじゃね?」という気持ちになり、トレランを始めた。10月にはパンデミック後では初、2019年のホノルルマラソン以来となる大会ハーフマラソン@トレイル)への参加・完走も果たした。

ところがレース後、再びランナー膝による痛みにしばらく苦しめられたので、どうしたものかと悩んでいる。今はとりあえず5月のバンクーバーラソン(フル)に向けて走り込んでいるが、果たして果たして。

クラフトビール同様、それが生活の一部になると知的好奇心のようなものも芽生えてくるわけで。山に関してはガイド資格とか取れないものかと思いイロイロと調べているが、要項をみるとまだまだ経験不足感が否めないので、まずはレベルアップからかな。

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来年はロッククライミングに挑戦したり、長距離ハイクの機会を増やしたり、救命救急講習とか探して受けたいと思う。

ニュースの見方

外から見る日本のニュースがこんなにも興味深いものだとは思わなかった。

SNSは基本的に見ないので情報源はLINEニュースといくつかのポッドキャスト番組に限られるが、なんというか、一言でいうと「悲しい」。どうしようもなく「日本人」としての自我が芽生える海外生活において、母国のニュースで誇れることが文化・スポーツ以外ないというのは、なんとも言えない気分である。未だに住むなら日本だとは思うが、パートナーや子どもがいても全く同じことを言い続けられるかは正直わからない。

運良く1年目から在外選挙も経験できたが、民間の飛行機で担当者が票を日本まで運んでいると知ったときは、開いた口が塞がらなかった。

そんなこんなで今まで以上に世界情勢にも目を向けるようになって、何かと日本のニュースについて相対的に考える機会に恵まれた。中でも個人的に特に気になるのは持続可能性に関する話題。

資本主義ど真ん中をいく大企業。その分すべてのアウトプットに責任が伴うし、小さなアクションが良くも悪くも大きな社会的影響を及ぼす。その内側に入ってみて、持続可能性と資本主義の両輪でまわる現実のあり方を問い直したい。本当に大企業はクソなのか?大企業にしかできないこともまたあるのではないか?

転職記事にも書いたが、移住後、そのように「自分の属する組織・業界」「自身の行動」「日頃扱っているテクノロジー」を主語にして、より大きな問題について議論する機会・仲間が増えた。

一方、日本の友人・知人、あるいはメディアのこの手の話題の扱い方との温度差は歴然で、「サステナビリティ(笑)」と一笑に付される機会の未だ多いこと*3。悲しいのう。

「自分には関係ない」「抜本的解決は不可能」というひとは、例えば環境問題については、最近日本語訳も出たらしいビル・ゲイツの "How to Avoid Climate Disaster" を読んでみてください。解決に向けたテクノロジーは既に存在し、個人の行動変容と資本によるイノベーションの促進で確実に状況は変えられるのだということが分かる。

takuti.me

僕らはもっと「欲張り」でいい。

加えて、「持続可能性=環境問題」ではないことも覚えておきたい。DEIや貧困、人権など、様々な話題が「持続可能性」の議論の一部であり、システム的思考が求められている。たとえば「環境やばい!」といって肉の消費をみんなが止めたとして、その生産に携わっている人の仕事はどうなるのか。「テクノロジーで解決」と簡単にいうが、インターネットにアクセスすることすら叶わない状況にある人々はどうすればいいのか。そんな想像力を持ちたいわけです。

いま僕が最も怖いのは、こういった話から目を背けて自分の考えを持たずに(情報、食料、自然、娯楽を包括した広い意味での)“世界”を思考停止で消費してしまうこと。そのために、とにかく歩みを止めず、自分自身の行動を変え、できるだけ声に出すことを心がけている。

offers.jp

環境問題、時事問題、キャリア論、技術のフェアユース。そんなことは全部話題になって当たり前。その上で「あなたはどう考えますか?」というお話がもっと気軽にできるようになったら、それはとっても素晴らしいなぁと思うのです。

その点、今年のように「書き続けること」のメリットは大きくて、友人、同僚、マネージャー (!)、あるいは見ず知らずの業界人から「ブログ読んだよ」と声をかけてもらえたことで、それが新しい視野を取り入れるきっかけになった。数万円の広告収入よりも、こういった稀だけど直接的なフィードバックのほうが今は100倍良い。

他方、基本的に同じ考えの人が周囲に多いのは問題に感じている。「わかる。確かにそれは問題だよね」と共感を得られて話が盛り上がるのは“気持ちいい”が、多様性は確実に欠如している。その結果得られたアイディアは、果たして一体どこまでが本当に「自分の考え」と呼べるのだろうか。したがって、いかに反対意見を取り入れやすい環境に身を置くかは課題である。

私的ベスト

さて、そんな一年間を支えてくれた、今年心が動いたものたちです。

アニメ

新作全く見られず、カナダ版プライムビデオで日本の旧作アニメを見続ける日々。とはいえ、移植されているものは基本的に名作でハズレがないのでかなり良い。なぜかラインナップに青春・恋愛アニメが多くて心をえぐられるが。

最近はハンターハンターを全話見た(一ヶ月くらいかかった)。

映画

しか見られなかった…。

そこあにいわく今年はアニメ映画大豊作年だったとのことで、日本にいなかったことが悔やまれる。

実用書については、一冊でどうこうというよりは、複数読んで一歩前進という感じなので難しい。しかしブログにまとめたものは全て何らかの「発見」があって良かったです。

読書記録 | takuti.me

以下、漫画・小説。

A子さんの恋人

いつまでも「あの頃」に囚われ、なかなか次へと進めないA子たち。そんな「ありがち」な迷いと日常は、きっと誰もが大なり小なり抱えている経験・想い・感情に重なるものだと思う。僕は2018年ごろを思い出しました。結局あの頃が一番楽しかったんだよなぁ。

山と食欲と私 14巻

ずっと好きです。

takuti.hatenablog.com

新刊が出るたびに1巻から読み返して、山に行った気分になってる。ちょうど昨年末に石鎚山に登ったばかり&コロナ禍であることをバッチリと反映した内容だっただけに、リアリティ120%だった。

さいはての彼女

楽園のカンヴァス以来の原田マハ作品。Kindle本セール中になんとなく買ったのだが、これが大当たり。登場人物ひとりひとりの「表情」と物語が展開される舞台の「景色」が驚くほど色鮮やかに描かれており、一瞬で脳内北海道トリップができます。

残照の頂 続・山女日記

誰も死なない湊かなえの傑作、山女日記の続編。前作は2017年オススメ本ベスト3に挙げたほど気に入っていて、その魅力は今作も健在。先の原田マハ作品と同じく「旅する女性」(※ただし山に限る)に焦点を当てたもので、「山」を通して「人生」を見つめる大変味わい深い一冊。読後感は唯一無二。

ポッドキャスト

ゆとりっ娘たちのたわごと

二人がドンピシャ同い年同学年でツボすぎる・・・。8月に出会って、その月マジで朝起きてから寝るまで仕事の時間以外ずっとゆとたわ聴いてた。

セレピ回がマイベスト(職業柄)。

直近では突然「Takramとか?」とTakramへの言及があった回が謎にツボった。

Your Undivided Attention

インターネットというものに対して個人的にずっと考え、感じ、悩んでいたことが完全に言語化されていた。ブログ経由である方から薦めていただいたポッドキャストで、出会えて本当によかった。ありがとうございます。

全話必聴だが、私的推し回は次の2つ。ユヴァル・ノア・ハラリて・・・毎回ゲストが豪華すぎるんよ。

最近は "Have you ever seen The Social Dilemma on Netflix?" 的な切り口で周囲にメッチャ布教してる。

仕事

転職して4ヵ月、シンプルに仕事が楽しくて自分でも驚いている。

takuti.me

オンボーディングコンテンツから日常業務、社内ネットワーキングに至るまで、様々な場面で大企業にしかできないこと&大企業だから厳しいことを見ることができて、社会見学的に素直に面白い。

・・・それ以上特に書くことも(書けることも)無いっスね。

以上、クォーターライフクライシスと言われてしまえばそれまでな気もするが、いろいろと悩みながらも山を登るように一歩一歩、時に立ち止まり、時に遠回りをしながらも今年も生き抜くことができました。

みなさんありがとうございました。良いお年を。

*1:中部 クラフトビール一覧(静岡)の上からWEST COAST BREWINGまで、醸造終了・移転・パブなしを除く全て。

*2:気温は最高。酔いや眠気が一撃で覚める肌を刺すような冷え込みは、人生の8割弱を過ごした長野と福島を思い出す。降雪量はむしろ少ないし。

*3:もちろんグリーンウォッシュを行う残念な企業の実態がこのような認知を後押ししていることも事実。